私たちについて
エレフジャパンについて
タイ生まれの「Eleph」(エレフ)は、
神の仕いと崇められるアジア象をはじめとする、
絶滅危惧種を保護するために誕生したライフスタイルブランドです。
エレフジャパンでは、そうした理念を
日本ならではの動物愛護精神で受け継ぎ、
誰もが大好きな「猫」をモチーフとした商品を提供しています。
キャラクターとして描く猫はすべて
耳を「Vカット」(去勢、避妊した目印)したものです。
「エレフ」のバッグを持つことで「地域猫活動」への
メッセージにつながることを心より願っています。
エレフジャパンでは、絶滅危惧種、殺処分動物の
支援活動の一環として、売上の一部を
(公財)日本動物愛護協会「地域猫活動」への寄付とさせていただきます。
『地域猫「ぶい」のひとりごと』
ミー、チー、トラ、シマちゃん、
……どれもしっくりこないが、
呼ばれれば誰にでもシッポであいさつする。
少し前、保護猫活動家の⼈に動物病院へ連れられて、
去勢⼿術をして⽿カットしてからは、
「ぶい」と呼ばれることが多くなった。
⽿が「V」字にカットされているから「ぶい」、
結構気に⼊っている。
「ピース」と呼ぶ⼈もいるけど、それも嫌いじゃない。
この街にはボク以外にも「ぶい」がたくさんいる。
みんな病院で⽿カットした地域猫。
「ぶい」と呼ばれると、
みんなで返事をしてしまうことがある。
ボクたちのように街で暮らす猫は、
人にとっては迷惑らしい。
耳カットしていない描たちを放置しておくと、
どんどん仔猫が生まれて、
その仔猫がやがてまた仔猫を産んで、
街中に猫が溢れてしまうから。
もともとカラダが弱かったり病気になりやすい猫もいて、
そういう猫は感染症にかかりやすく、
病気にかかると、誰かにうつしてしまうことが多いから、
保健所に連れていかれることがある。
耳カットしているからといって、
誰からもやさしくされるわけではないんだ。
里親探しの会に連れて行ってもらえるのは、
ほとんど がべットショップで売れ残った仔猫で、
それでも里親が見つからずに、
此処に帰つてくることが多いと聞いた。
ボクらのような地域猫が里親探しの会に
連れて行かれたことは、ほとんどなく、
誰もがずっと此処で暮らすことになる。
猫好きな人たちは、
いたるところにエサを用意してくれる。
うれしいけど、それが人にとっては大迷惑らしい。
そのままにしておくとバイ菌が発生したり、
腐ったり、カラスやハエがつっついて、
寄生虫や感染症を発生させ ることがあるんだって。
カリカリじゃないエサは、
夏になると腐るのが早くて悪臭を放つから、
鼻をつまんで通る人がたくさんいる。
場所を取るからトイレの用意は少なくて、
誰かの家の庭とか道端とか、
どこかで用を足さなければならない。
すると臭いはひどくなって、
ボクらはもっと悪者扱いされる。
ボクらは、此処で生まれて暮らしているだけなのに、
大声で怒られたり、蹴っとばそうとする人もいるから、
やってられない。
向かいの家の短⽑猫が、
いつも窓越しにこちらを⾒ているけど、
どういう気持なんだろう。
”広いところで⾛り回れていいなぁ”、なのか、
”家がなくて可哀そうだなぁ”、なのか。
以前、家に住んでいたという猫は、
「外を知ってしまうと、もう家には戻りたくない」
って⾔ってた。
「家の中は狭いから?」って聞いたら、
「それもあるけど、急にやさしくなくなった飼い主さんが怒るから」だって。
その飼い主さんに、
家から遠く離れたこの街に連れて来られて、
そのまま置いていかれちゃったみたい。
⼀緒に暮らしていた猫も、この街に着く前に、
別の街に置いていかれたんだって。
なんでそうされたのかは今もわからないらしいけど、
「嫌われちゃったのかな」って寂しい顔をしてた。
その猫も、こないだ耳カットしたんだ。
保護猫活動家のお姉さんに
やさしく抱きかかえられたから、
また人と一緒に暮らせるかもって
期待したらしい。
残念ながらそうはいかなかったけど、
「ここで幸せに暮らしてね」って
撫でてもらったって、
嬉しそうに話してくれた。
「これで君も立派な地域猫だね」と言ったら、
少し照れてた。
この国では⼈の数が減っているそうだけど、
この街の猫はどんどん増えて、
エサの競争率が⾼くなって、
街のいたるところがトイレになり、
街中が前より臭くなった。
⽿カットしていない猫が断然多くて、
⽪膚がただれたり、
⽬やにをつけた仔猫がいっぱい。
そういえばカラスも増えたなぁ。
ボクらはもともと野生の生き物だから、
どんな環境にも慣れるけど、
人はそうはいかないみたい。
街が汚れたり
家で飼っている猫が病気になったりすると、
ボクらを犯人扱いする。
街の猫が増えないように殺処分することもあるんだ。
ボクのともだちも何人か連れて行かれて、
帰ってこないまま。
人が増えても、誰かを殺すことってないでしょ。
猫だって同じはずなのに。
そうならないために、
ボクらは、オスもメスも手術をして、
この街に猫が増えないようにしなければならない。
それにはもちろん地域や
保護猫活動家の人たちの支援が必要。
命を管理するっていうのかな。
誰かの飼い猫にはなれないけど、
地域でボクらの命を管理してくれる
ずっと暮らすことができる。
街の猫みんなで返事をするように
なれば、きっとボクらにも、
⼈にとっても安⼼した街になる。
⽿カットした、この街の⼈と⼀緒に暮らしている、
地域猫だ。
この街を、ボクらの『ふるさと』にするためには、
ボクらのことをわかってくれる、
⼈のチカラが必要なんだ。
執筆:栗山圭介
Illustration: Dean Aizawa